【 味噌づくり 】

 今回は年長のK君のお話をしたいと思います。先々週の金曜日、砂場で一生懸命に泥をこねているK君を見つけて「なにつくってるの?」と聞いてみると「味噌だよ」と教えてくれました。「そうか、がんばってるな〜。できたらごちそうしてね」と言ってその場を離れました。

 休み明けの月曜日、職員室で仕事をしていると「わたるたいちょ〜。できたぞ〜」という声が聞こえてきました。行ってみるとK君が立っています。すっかり金曜日の出来事を忘れていた僕は「なにができたの?」と聞くと「味噌だよ!」と言って古い弁当箱にピタッーと平らに黒光りしながらおさまっている泥を見せてくれました。「いやー、よくできたね。本物みたいだね」「そうだろう、苦労したんだよ、この味噌つくるの」と得意気です。「これで何か料理してくれよ。」「何がいい?」「味噌汁がいいな」「味噌汁か、でも入れ物がないよ」というので少し大きめの木のお椀を「これにつくってね」と手渡すと「わかった」と砂場の方に元気よく向かっていきました。

20〜30分後「わたるたいちょ〜、できたぞ〜」という声が聞こえてきました。行ってみると先ほど渡したお椀をもってK君が立っています。「おーできたか、どれどれ味見させてくれ」「うまいな〜、この味噌は色も香りもいいね」「そうでしょう!味噌汁は泥と水を入れてそれから泥だけ取らないとだめなんだ。具もいろんな葉っぱが入っているんだよ。」と教えてくれます。「そうか〜、だからうまいんだな!今度はこの味噌でみそラーメンが食べたいな」「わかった」とK君。20〜30分後「わたるたいちょ〜、できたぞ〜」と言う声が聞こえてきます。そこにはおいしそうなみそラーメンを持ったK君がいました。

こんなやり取りが月曜日から水曜日まで3日間続きました。田植えの前も田植えの後もK君はいろんな味噌料理をつくっては持ってきてくれました。味噌にぎり、魚の味噌焼き、味噌うどん、グラタン、味噌だんご、プリン、味噌かつ、味噌煮込みご飯、味噌わたあめ、味噌でんがく等、10品を越える料理を一つ一つ丁寧に作っては食べさせてくれたのです。

そんなK君の味噌づくりに熱中する姿、一つの事に集中する力に感動しました。そこでK君に「ほんものの味噌って何からできてるか知ってる?」と聞くと「知らない」というので「味噌はね、給食でよく食べる豆からできているんだよ。豆を煮て、つぶして、丸くして、入れ物にペタペタとくっつけてつくるんだよ」と教えました。K君「ふ〜ん、豆からできるんだ。」「納豆の豆と同じなんだよ。なんなら畑に豆を植えて、採れた豆で本物の味噌をつくろうか」と提案すると「うん、やってみよう」とK君。

その日のお帰りの会でみんなが集まった時に「K君が毎日毎日、味噌でお料理を作っているの知ってる?」と聞くと「うん、K君、上手に味噌つくってた。」とRちゃん。「僕も一緒につくったよ。」とG君。仲間たちもK君の味噌づくりを見ていたのです。そんなK君からの「本物の味噌づくりをしてみたい。畑で豆を作るところからやってみたい。」という提案にクラスのみんなは大賛成でやる気満々です。話が進むにつれ畑にはトマト、ニンジン、きゅうり、キャベツ、いちご、りんごにオレンジまで植えようという案もでました。それから裏山の頂上にあるログハウスにレストランをつくろう。隣にあるツリーハウスもつなげてレストランにしよう。前庭にもお店を作ろうと実に様々な案が出されました。

これから年長さんはみんなでレストランごっこ、畑づくり、野菜づくり、豆づくり、そして本物の味噌づくりへと向かっていきそうです。

今回はK君の遊びから生まれた“味噌づくり”を取上げながら、クラス全体に提案していきました。一人の子どもの心の奥底から湧き上がってくる純粋な意欲をよりどころにその思いをみんなで共有し、クラス全体の活動へと展開していくことで、仲間と協力する喜び、同じ目的に向かっていく中で起こってくる課題やトラブルを乗り越える体験をこれから積み上げていきたいと思います。

できることとできないことあるでしょうが、年長さんが仲間と共に成長するために共通の目的をもって活動していくことはとても大切なことです。仲間と繰り広げる様々な活動の中で自分自身の思いを伝え、それを実現できる子になって欲しいと思います。

これから年長さんの活動がどのように展開していくのか楽しみです!

2011.6 認定こども園めごたま 園長 井 上 亘