【 良い遊び 】

 入園から今日までの子ども達の姿を思い返しますとはじめは何をやっていいのか分からず、ただただ泣きじゃくり、不安定だった子ども達が、少しずつではありますが、自分の好きな遊びや気の合う友達を見つける、まさに試行錯誤の過程であったと思います。

 そして今、どこに何があるのか、どんな人がいるのか、どんな雰囲気なのか、何をやってはいけなくて、何をやってもいいのかなど、子ども達自身が園での暮らし方を理解したことで、やっと安心して通うことができるようになったのだと思います。

 ここから更に、その子が本来持っている地金を心置きなく表出し、自分の心を隠すことなく、仲間と楽しんだり、ケンカしたり、仲直りしたり、本気で付き合える関係を作り上げていきたいと願っています。

 そのためには「良い遊び」が必要です。「良い遊び」が「良い仲間」を作り、「良い仲間」が「良い人間」を育てるのです。

それでは「良い遊び」とはどんな遊びなのでしょうか?それはその子自身の心の底から湧き上がってくる純粋な意欲に支えられた遊びです。時間つぶしの遊びでもなく、誰かにやらされる遊びでもなく、誰かにほめてもらうための遊びでもありません。その子自身が本当に心の底からうれしい、楽しい、ワクワク、ドキドキを感じる遊びです。その間中は、時間も、場所も、時には自分自身の存在も、忘れてしまうほど集中し、熱中し、没頭する遊びです。

このような「良い遊び」をしている状態を「フロー」と呼びます。「フロー」には一人遊びでもなりますし、グループや集団でもなります。年齢が低い未満児さんや年少さんはまず一人遊びの中で充分に「フロー」体験を積み上げておく必要があります。砂遊び、泥遊び、積木遊び、お絵かき、ガラクタ工作、何でもよいのです。その子が集中している遊びは周りの大人が中断しないように気を付けてあげればよいのです。その上で遊びがもう少し楽しくなるように、もう少し長続きするように、手助けすればよいのです。

この一人遊びの「フロー」を充分に体験した子は、遊びの楽しさを知っています。自分のやりたいことに熱中する喜びを知っています。これは人からほめられるから、お菓子やゲーム機を買ってくれるからといった人から与えられる「外発的な動機」ではなく、自分自身の心の内側から湧き上がってくる「内発的な動機」に従って行動することの喜びを体感しているということです。

このような一人遊びを充分に積み重ねた子どもは、年中長さんとなり仲間と一緒に遊ぶ機会が増えた時も同じように「フロー」を感じることができます。むしろ自分一人で遊んでいるよりも仲間と遊ぶ方が楽しいというより強い「フロー」を体験してきます。この仲間との遊びで得る集団の「フロー」はより強烈に子どもの心に突き刺さります。一人より仲間と一緒の方が何倍も楽しいのです。そしてこの集団遊びでの「フロー」をたくさん経験している子どもほど、大きくなってから自らの欲望を律する「自制心」や周りの人と協力する「協調性」が育つといわれています。

つまりここに「良い遊び」は「良い仲間」を作り「良い仲間」が「良い人間」を育てるという一連の流れがあるのです。

今回、回覧させていただくDVD四季発行「春版」は、年長さんの集団遊びの内容が納められています。年長さん達がお店屋さんごとの役割分担や工夫しながらお客さんに対応していく姿など、一人遊びでは体験することのできない集団遊びの「フロー」を見て取ることができます。このような「良い遊び」が人間関係の基礎である「良い仲間」を作る上で欠かすことのできない重要なプロセスなのです。

こども園ではこの集団遊びの「フロー」をより豊かに、より深く体験させることで、最終的には一人ひとりが「良い人間」になるための基盤づくりをしたいと考えています。

7/30(土)には、こども園全体のお祭りを開催します。この日は大人も子どもも思い切り遊びましょう。心も体も遊びに集中しましょう。それが子ども達の大切な乳幼児期における最高の教育である「良い遊び」となるように。

 

2011.6.30 認定こども園めごたま 園長 井 上 亘