相互理解

先日、大変心温まるエピソードがありましたのでご紹介したいと思います。このエピソードを通して、お互いに理解し合う「相互理解」はどのようなプロセスを経て成り立っていくのかを考えていきたいと思います。

一つ目のエピソードです。

3才の女の子、Hちゃんが「ママに会いたーい!」と泣いているとJ君が何も言わずにHちゃんの手を握り、ホールにつれていってくれました。

その姿がとてもたのもしくて、かっこよかったです。

J君に「優しいね」と声をかけると「そんなことねえよ!」と恥ずかしそうでした。

そんなJ君の良いところをもっと見つけて伸ばしていきたいと思います。

(もも組担任より)

実はJ君も毎朝お母さんと別れるのがつらくて泣いてくることが多いお子さんです。そんなJ君だからこそHちゃんの「ママに会いたーい!」と泣いている時の気持ちを我がことのように感じたのでしょう。

もう一つ、ご紹介したいと思います。

3才の男の子、S君、Y君、R君が山車づくりをしていました。

その時、S君が使っていたガムテープをY君が無理やり取ってしまいS君が泣き出してしまいました。

それを見ていたR君が「順番に使うんぜ!、貸してって言わないとダメだよ」とY君に教えていました。

それを聞いてY君が「貸して?」と言うと泣いていたS君も泣き止み「いいよ」と答えました。

「俺もたまにギッて取っちゃうけどな」とR君。

それを見ていた先生が「Y君に教えてあげて偉いね」と言うと「がギッって取られたら嫌だもん!」とお友達が嫌なことをされているのを自分に置き換えていたことに驚かされました。

何より3人で解決しようという気持ちがとてもうれしかったです。

(もも組担任より)

3才の子ども達がよくぞここまで相手の気持ちを理解して、仲立ちしたなと感心します。

「相互理解のプロセス」は以下の3つにまとめることができます。

1.まず重要なことは「自分自身の気持ちに気付く」ということです。

お母さんと別れる時、自分はどんな気持ちになのか?使っているガムテープを取られた時どんな気持ちになったのか?「イヤな気持ち」「悲しい気持ち」「くやしい気持ち」いろいろな気持ちが浮かんでくるはずです。その気持ちに自分自身が気付くことが相互理解のベースとなります。

J君は自分がママと別れる時の気持ちを思い返したでしょうし、R君は「がギッって取られたら嫌だもん!」と自分の体験を振り返って、自らの感情を表現しています。自分自身の気持ちを正しく把握するこれが相互理解の基本、第一段階です

2.次に大切なのは「相手にも気持ちがあることに気付く」ということです。

相手も自分と同じように「イヤな気持ち」「悲しい気持ち」「くやしい気持ち」その他にもいろいろな気持ちをもっているということに気付くということです。そのためには一緒に遊んだり、給食を食べたり、ケンカしたり、様々な体験を共有する時間が必要です。幼い子ども達は、いきなり相手の存在を認識することはできません。時間をかけてゆっくりと自分以外の存在を確認していくのです。そしてやっと「あー、こいつも僕(私)と同じ、泣いたり、笑ったり、怒ったりする、仲間なんだ!」と分かっていくのです。その時になって初めて「相手にも気持ちがあることに気付く」のです。

3.そしていよいよ「相手のことを自分のことのように感じられる」段階に達します。

君は何も言わずにHちゃんの手を握り、ホールにつれていってくれました。先生はお友達や嫌なことをされているのを自分に置き換えていたR君の姿を見て驚きそして喜んでいます。二人は「自分の気持ち」や「相手の気持ち」に気付いた上で、さらに仲間関係の深まりや豊かな共通体験により「相手に起きていることをまるで自分のことのように感じられる」感性を育んでいたのです。

1.「自分自身の気持ちに気付く」

2.「相手にも気持ちがあることに気付く」

3.「相手のことを自分のことのように感じられる」

この「相互理解の3つのプロセス」を踏まえた上で、君がY君に教えたような「順番に使うんぜ!、貸してって言わないとダメだよ」という解決策の提案が初めて意味を持つものになります。ただ単にモノを取られたら「順番ね!」とか「貸して?」って言えば良いということではありません。

そして最終的には先生が3人で解決しようという気持ちがとてもうれしかったと言っているように大人の介入なしに自分たちの力で問題を解決していく力を培ってほしいと願っています。

悲しくて泣いてしまうことや仲間とのトラブルは決して悪いことではありません。むしろ「子ども同士がお互いをよりよく理解するためには必要な試練」なのです。

そのことを常に肝に銘じて日々の保育に挑みたいと思います。

 

2011.9  認定こども園めごたま 園長 井 上 亘